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- 『アンサンブル』は世界をつなぐ架け橋 -
                                     多喜 靖美

 「音楽は世界共通語」と言いますが、『アンサンブル』は正に音楽で互いの意思を伝え合います。「こう弾きたい」という思いを相手に伝え、相手が「どう弾きたいか」をキャッチして一つの音楽を作り上げる『アンサンブル』の体験は、音楽の本質を学べるだけでなく人間関係を円滑なものにします。 私も若い頃に初めて受けたスイスの講習会で、ドイツ人、スイス人の弦楽器奏者とブラームスのピアノ四重奏曲を演奏した時に味わった音楽で心が通い合うという感動的な体験が、未だに忘れられません。 演奏する側も聴く側も、国や世代を越えて感動を共有できます。楽器を弾ける者が数人集まったら「アンサンブルしよう !」と自然に言える環境になれば何て素敵でしょう。

 2009年の夏、私はワシントンDCで行われた『ワシントン国際ピアノフェスティバル』の講師として招待され渡米しました。その帰りにプライベートで立ち寄ったボストンで、偶然『ボストン音楽祭~ユース&ミューズ~』に出会いました。私は若い頃からアンサンブルが大好きで『室内楽啓蒙』をライフワークと考え、国内各地で演奏や指導を長年行っています。『ボストン音楽祭~ユース&ミューズ~』は、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなどを学ぶ青少年に、ソロ演奏はモチロンのこと室内楽や協奏曲まで、優秀な指導陣から学ぶチャンスを与えるという、正に理想的な教育プログラムを実施している音楽祭です。

 その『ボストン音楽祭~ユース&ミューズ~』を企画運営しているのが日本人指揮者の佐藤洋平氏、チェリストの谷口賢記氏だと知り、帰国後もコンタクトを取り続ける中で、彼らがボストンでの成功を元に日本でもぜひこの教育プログラムでの音楽祭を実施し、一人でも多くの音楽を学ぶ青少年に素晴らしい機会を与えたいと考えていることを知りました。

 私は20年ほど前から年に数回ピアノ指導者の為の研修会指導に埼玉県秩父市に通い続けています。豊かな自然に恵まれ地域伝統芸能保存に尽力している秩父こそ全ての面で打ってつけだと考え、この音楽祭の秩父誘致に全面的に協力しました。その甲斐あって、2011年8月『秩父国際音楽祭~ユース&ミューズ~』開催が決定。招聘指導者にはボストン音楽院の協力で各科主任教授を派遣して戴けることになったほか、世界の第一線で活躍している演奏家・教育者、例えばオランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席ヴィオラ奏者やジュリアード音楽院教授など、多数の素晴らしい音楽家が来日して指導にあたって下さることになりました。

 言葉を越えた音楽によるコミュニケーション『アンサンブル』。ボストンから秩父に繋げられたこの『アンサンブル』の架け橋は、秩父を経由して日本国内は元より世界各地へ繋がる架け橋となることでしょう。